2011年 Summer

◆苦いビールがなぜおいしい ~おいしさのひみつ~

  大人の人が、おいしそうにビールを飲んでいるのを見て、「なんであんなに苦いのがおいしいの?」と思ったことはありませんか?ビールを飲み始めた頃は、苦いだけだったビールが、飲み続けているとおいしてくてたまらなくなったという方もたくさんいらっしゃると思います。なぜ、飲み始めた頃は苦かったビールが、だんだんとおいしいと感じるようになるのでしょうか?今回は「おいしさのひみつ」について紹介します。

 「甘味」「塩味」「うま味」「酸味」「苦味」が、人が感じる味覚の基本五味と呼ばれています。これらは、食品に含まれる化学物質に対する味覚です。この中で、「甘味」「塩味」「うま味」の三つは、赤ちゃんでもおいしいと感じる味覚です。「甘味」はエネルギーのもとになる糖に、「塩味」ミネラルに、「うま味」はタンパク質をつくるアミノ酸や核酸にもとづくもので、人体に必要な栄養の存在を知らせるシグナルとなっています。
  一方、「酸味」と「苦味」のある食べ物は赤ちゃんは嫌がります。「酸味」は腐敗したものに、「苦味」は毒素にもとづく味覚です。つまり、人間は本能的に人体に必要なものをおいしいと感じ、人体に害のある物をおいしくないと感じるようになっています。



 では、本来おいしくないと感じるはずの「酸味」や「苦味」をおいしいと感じるようになるのはなぜでしょうか?
 実はおいしさは、食品そのものがもっている「甘味」「塩味」「うま味」「酸味」「苦味」だけでなく、食体験・情報・食べたときの体調にも大きく左右されています。
 「酸味」のもとになる酢酸やクエン酸などの有機酸には、接種した栄養分を効率よく分解する働きがあり、消化・吸収を促進し、栄養分の利用効率を高めます。また疲労の原因となる、筋肉内に溜まった乳酸を取り除く作用もあります。疲れやすく暑い夏、食欲がないときに酸っぱい物を食べると食が進み、元気になることに気づいた人々は、料理の中に「酸味」を上手に取り入れるようになっていったと考えられます。
 「苦味は」、人が成長するにつれて好むようになる味です。食に対する好奇心が旺盛な人ほど苦味のある食べ物を好む傾向も見られます。「苦味」のもとになる苦味成分には、大量にとれば人体に害のある物もあり、苦味成分そのものが人体に絶対必要なわけではありません。おそらく、子どもたちは、苦い食べ物を親がおいしそうに食べるのを見て興味をもち、少しずつ手を伸ばすようになるのでしょう。そうした経験を積み重ねながら、本来危険なシグナルである「苦味」に慣れていく考えられます。また、苦味成分には、抗ストレス作用があることが知られており、ストレスを感じた後は「苦味」をあまり感じなくなることもわかってきました。ブラックコーヒーを片手に仕事をしている大人の人が、仕事が終わった後のビールが格別においしく感じるのは、たまったストレスから解放されているからもしれません。「苦味」は、まさに大人の味なのです。


人は、様々な食体験・情報・そして体調などによって感じるおいしさから、いろいろな味覚の世界を広げ、食生活を豊かにしてきたのです。