2007 Spring

◆星を愛した詩人  『宮沢賢治』

  子どものころから星が好きで、よく屋根に上がっては星をながめていたといいます。「銀河鉄道の夜」をはじめ「双子の星」など星をテーマにした作品も多く書きました。また、農学校の教師を退職した後も、農民の生活の向上のために努力し、その人柄からたいへん慕われていました。しかし、37歳という若さでこの世を去ってしまいました。  今回は、彼の代表作「銀河鉄道の夜」に登場する星の世界を少しだけ紹介しましょう。


◆『銀河鉄道の夜』あらすじ


  ケンタウル祭りの夜、主人公のジョバンニは誰もいない暗い丘の上に寝ころんで、青い琴の星を眺めていました。その時、聞こえる「銀河ステーション、銀河ステーション・・」という不思議な声。気がつくとジョバンニは、夜の軽便鉄道の車室に座っていました。そして、目の前には青ざめた顔をした親友のカムパネルラが-。ふたりは一緒に、銀河ステーションから天の川の左の岸に沿ってサザンクロスへと旅に出かけます(左図)。その中で、不思議な体験や出会いを重ねていくのです。

◆「銀河」「天の川」

 「天の川」は「銀河(系)」とも呼ばれ、夏の北の夜空から天頂を通り、南の地平線にかけて、ぼーっとした雲のように見えます。昔の人は、川や乳が流れていると考えましたが、実は、銀河とは二千億個ぐらいの星が薄く渦状の円盤に集まっているものなのです。私たちも、その銀河の中にいて、周りの星を見ているのですが、銀河の星のたくさん集まっている部分が天の川として見えているのです。  △2「北十字」「アルビレオの観測所」  はくちょう座は、夏の空高く天の川に重なるように描かれています。その星の並びは、ちょうど十字架のようにも見えることから、有名な南十字に対して「北十字」と呼ばれています。その北十字の付け根の部分(はくちょうのくちばし)の星は、「アルビレオ」です。肉眼で1つに見えるこの星を、双眼鏡や望遠鏡で見ると、金色の星(3.1等)と青色の星(5.1等)が寄りそっている二重星だということが分かります。この二重星は、その美しさから「天の宝石」ともいわれています。

◆「さそりの火」

 S字の星の並びで有名なさそり座には、その心臓部分に、真っ赤な輝きの1等星アンタレスがあります。「さそりの火」とは、この星を指しています。アンタレスとは、アンチ・アレース(火星の敵)という意味です。これは、火星とアンタレスが並んだときに、その赤い色を競っているように見えるからでしょう。中国ではアンタレスを大火、または火と呼んだそうです。また、アンタレスはたいへん大きいことでも知られています。その直径は、太陽の600~800倍もあるそうです。

◆「南十字(サザンクロス)」

 「石炭袋」  「みなみじゅうじ座」は、南半球にある星座のため、日本では(ごく一部を除いて)見ることができない星座です。全88星座の中で一番小さく、天の川の中にあるのですが、1等星を2個も持つため、たいへん目立っています。大航海時代(15~16世紀)には、この星の並びを南の方角を知る星として使っていました。また、みなみじゅうじ座のすぐ側には、天の川の一部をかくすように暗黒星雲(温度の低いガスなどが集まっている部分)があります。その色と形から「石炭袋」と呼ばれています。